私は子供の頃から年賀状に自分で絵を描くのが好きでした。一人一人に合った絵を描くのが楽しみで、どちらかというと、宛名を書くのは億劫に感じていました。
そこで中学1年の時、「面倒な宛名を全部先に書いてしまって、その後で絵を集中して書こう!」と思いつきました。20枚くらいあったと思いますが、せっせと宛名ばかり先に書きました。そして、1枚ずつ大好きな絵を連続して描きました。
みんな喜んでくれるかな、なんて思いながら、まとめてその年賀状をポストに投函しました。
そして年明け、親しい友人が、すごく申し訳なさそうな顔で私に話しかけてきました。
「あの〜、年賀状なんだけど。あれは、あぶりだし?」と言うのです。
あぶりだしって、野菜の汁とかで文章とかを書いて乾いたら見えなくなっていて、火で炙ったらまた浮かび上がってくるというものです。
理科の実験でよくやりますよね。意味が分からなかったのですが、要するに通信欄が真っ白だったみたいなんです。
私は全員に絵を描いたつもりだったんですが、2枚の年賀状がひっついていたのかもしれません。宛名を後から書けば、そんなことは絶対に起きないはずです。
友人は、その年賀状を本当にコンロで炙ってみたそうです。
あれから、2度と宛名をまとめて書くことはありませんでした。